カスタマーハラスメントとは?定義・具体例と企業に求められる対応

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「カスタマーハラスメント」という言葉は近年急速に広まりましたが、実際にどこからが「カスハラ」で、企業として何を整えておく必要があるのか、正確に把握できている人事担当者や管理職の方はまだ多くないのではないでしょうか。本記事では、カスタマーハラスメントの定義や具体例、企業に求められる基本的な対応について整理します。

コラム:なぜ今、カスハラが問題になったのか(執筆者より)

「カスタマーハラスメント」という言葉は、本当はもっと前から必要とされていたのに、なかなか言葉にできなかったのではないかと感じています。

昔は「お客様は神様です」という空気が強く、お金を払う側の客のほうが立場が上、という雰囲気がありました。店員側は、多少の迷惑行為も受け止めるものとされていたように思います。

でも、店員も一人の人間です。それぞれに個性があり、尊重されるべき存在です。この当たり前のことが、少しずつ社会の共通認識になってきました。背景には、日本全体で「個性を大事にする」という価値観が広がってきたことがあると思います。海外、特にアメリカの影響も大きいのではないでしょうか。ワークライフバランスやQOL(生活の質)という言葉が広まったのも、同じ流れの一部だと感じています。カスハラへの法整備が進んでいるのも、この延長線上にあります。

本当は、多くの人が「そんな扱いは嫌だ」と感じていたはずです。ただ、目立つことや人と違う意見を言うことを避ける文化が根強く、なかなか声にできなかったのだと思います。それが少しずつ積み重なり、ようやく表に出てきた。そんな印象を持っています。

この流れが進めば、お客さんと店員が、お互い気持ちよく過ごせる関係に近づくはずです。「立ったまま接客しなければならない」といった、昔ながらの根拠のない精神論も、少しずつなくなっていくといいなと思っています。

カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、一般に、顧客や取引先、利用者などから労働者に対して行われる著しい迷惑行為であり、その行為によって労働者の就業環境が害されるものを指すとされています。厚生労働省が公表している資料や業種別の対策企業マニュアルなどでも、こうした整理がなされています。

ポイントは、「顧客からの要求や指摘そのもの」が問題なのではなく、その要求の内容や、要求を伝える手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲を超えているかどうかという点にあるとされています。

カスタマーハラスメントの判断の考え方

カスハラかどうかを考える際は、大きく次の2つの軸で捉える整理が一般的に紹介されています。

  • 顧客等の要求の内容に妥当性があるか(商品・サービスに瑕疵や過失があるかなど)
  • 要求を実現するための手段・態様が、社会通念に照らして相当かどうか

たとえ商品やサービスに落ち度があったとしても、その伝え方が脅迫的であったり、長時間にわたって拘束したりする場合は、カスタマーハラスメントに該当し得ると考えられています。逆に、要求内容そのものが行き過ぎていても、伝え方自体は穏当というケースもあり、実際の現場では線引きに悩む場面が少なくありません。

カスタマーハラスメントの主な具体例

厚生労働省の資料や各種解説で挙げられている代表的な例としては、次のようなものがあります。

  • 大声での威嚇、暴言、繰り返しの怒鳴りつけ
  • 土下座の要求など、人格を否定するような要求
  • 長時間にわたる電話や居座りによる拘束
  • 社会通念上相当な範囲を超える金銭補償や商品交換の要求
  • SNSやインターネット上への誹謗中傷の投稿、投稿すると告げての脅し
  • 特定の従業員に対する執拗な攻撃・つきまとい
  • 性的な言動、身体的接触の強要

業種によって現れ方は異なり、小売業・コールセンター・宅配業・医療福祉分野など、顧客や利用者と直接接する機会が多い業種ほど、こうしたリスクにさらされやすいと指摘されています。実際に厚生労働省は、スーパーマーケット業や宅配業など業種別のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを順次公表しています。

なぜ今、企業対応が重要になっているのか

カスタマーハラスメントをめぐっては、改正された労働施策総合推進法により、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントと同様に、事業主の雇用管理上の措置義務の対象に加えられることになったとされています。施行時期については、厚生労働省の資料で「令和8年(2026年)10月1日から」と示されています。本記事執筆時点(2026年9月)はまさに施行直前にあたり、多くの企業で対応の準備が進められている段階です。

また、国の法改正に先立ち、東京都では2025年4月1日に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されています。この条例は罰則を伴うものではなく、事業者・都民・顧客等それぞれの責務を定める理念的な性格の条例とされていますが、全国初のカスハラ防止条例として、他の自治体や企業の取り組みにも影響を与えているとされています。

企業に求められる基本的な対応

相談窓口の整備

従業員がカスタマーハラスメントを受けた際に、一人で抱え込まずに相談できる窓口をあらかじめ定め、周知しておくことが基本とされています。既存のハラスメント相談窓口をカスハラにも対応できる形に広げる企業も多く見られます。

対応方針・マニュアルの整備

どのような言動をカスタマーハラスメントとみなすか、発生時に誰がどう対応するかといった社内ルールをあらかじめ明文化しておくことが求められます。現場任せにせず、組織として対応することが従業員を守るうえで重要とされています。

従業員への周知・研修

方針やマニュアルを整えても、現場に浸透しなければ機能しません。管理職・現場スタッフ双方への周知や研修を通じて、「一人で我慢しなくてよい」「組織として対応する」という認識を共有していくことが大切です。

まとめ

カスタマーハラスメントは、顧客対応に携わる従業員の心身の健康や離職にも直結しうる問題であり、2026年10月の法改正施行を機に、企業としての体制整備がこれまで以上に求められています。まずは自社の相談窓口や対応ルールの有無を確認するところから始めてみてください。

具体的な制度対応や社内規程の見直しにあたっては、最新の指針や自治体の情報を確認いただくとともに、必要に応じて社会保険労務士や弁護士など専門家にご相談されることをおすすめします。

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