「健康経営は大企業のもの」というイメージを持つ中小企業の経営者や人事担当者も少なくありません。しかし実際には、健康経営優良法人認定制度の認定法人の大半は中小規模法人部門であり、中小企業こそ取り組みやすい面もあります。この記事では、中小企業が健康経営を始める際の最初の一歩について解説します。
中小企業こそ健康経営に取り組む意義がある
直近の「健康経営優良法人2026」の認定実績では、中小規模法人部門の認定数が23,085法人と、大規模法人部門の3,765法人を大きく上回っています。これは、中小企業でも取り組み方次第で十分に認定を目指せることを示していると言えます。人手不足が深刻化する中、限られた人員で事業を回す中小企業にとって、従業員一人ひとりの健康を守ることは、事業継続そのものに直結する重要な経営課題です。また、大企業のような潤沢な予算がなくても、経営者と従業員の距離が近いという中小企業ならではの強みを活かせば、迅速に取り組みを進めやすいという側面もあります。
まず何をすればよいか:健康宣言事業への参加
中小規模法人部門の認定を目指す場合、まず前提条件となるのが、協会けんぽなど加入している保険者が実施する「健康宣言事業」への参加です。健康宣言事業は都道府県ごとに実施されており、多くの場合、費用をかけずに参加できる仕組みになっています。自社がどの保険者に加入しているか、健康宣言事業がどのような手続きで参加できるかは、保険者のホームページや窓口で確認できます。これが、中小企業が健康経営に取り組む最初の実務的な一歩になります。
中小規模法人部門の認定基準のポイント
中小規模法人部門の認定基準は、大規模法人部門と比べて求められる項目数が少なく設定されているとされています。経営理念の表明、健康課題の把握、具体的な健康施策の実行など、優先度の高い項目から順に取り組んでいくことで、無理なく基準を満たしていくことが可能とされています。すべてを一度に完璧に整えようとするのではなく、自社の従業員数や業種特性を踏まえて、実現可能な施策から着手する姿勢が現実的です。
費用をかけずにできる取り組み例
中小企業が健康経営を始める際、以下のような取り組みは比較的少ないコストで着手しやすいとされています。
- 健康診断の受診率100%を目指した声かけ・受診勧奨の徹底
- 50人以上の事業場であれば、法定義務であるストレスチェックの確実な実施と結果の活用
- 朝礼や社内掲示板を使った健康情報の発信、禁煙の呼びかけ
- 始業前のラジオ体操や、休憩スペースの整備など職場環境の小さな改善
- 経営者自身が健康経営に取り組む姿勢を社内外に示す「健康宣言」の表明
なお、常時50人未満の事業場については、これまでストレスチェックの実施が努力義務とされてきましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、将来的に義務化されることが決まっています。施行時期は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、2026年時点では正式な義務化前の段階ですが、早めに実施体制を整えておくことは中小企業にとっても有益な備えになると考えられます。
まとめ
中小企業にとって健康経営は、決して手の届かない取り組みではありません。健康宣言事業への参加という具体的な一歩から始め、自社の実情に合った施策を積み重ねていくことで、認定を目指すことも十分に可能です。どこから着手すべきか迷う場合は、加入している保険者や商工会議所、社会保険労務士、産業保健の専門家に相談しながら、経済産業省などが公表する最新の認定基準や申請要項を確認して進めることをおすすめします。



コメント